French Defence


フレンチ ディフェンス。1834 ~ 1836年 ロンドン 対 パリの通信チェスでパリのチームが 1.e4 に対し 1...e6 を使い勝利を得たため、その後 French Defence と呼ばれるようになった。1.e4 e6 のゲームは15世紀からあった。

基本アイデアは白に e4, d4 2つのセンターポーンを作らせ、その後ピースによる反撃、テーマとなる ...c5 や ...f6 の pawn break などで反撃を行うこと。

黒は序盤で窮屈な局面となるがエンドゲームで勝つことを狙い、白は黒の窮屈な局面や展開させづらい Bc8 につけ込む。白はキングサイド攻め、黒はクイーンサイドで反撃することが多い。

1.e4 e5 から起こる King's Gambit や Evans Gambit を避けるために用いられた時代もあった。実際 1.e4 e5 から起こる多くの変化を避けることができるが、1...e6 とすることで Bc8 の白マスビショップ展開を妨げてしまい、そのビショップの扱いが問われるため、Bc8 の展開を妨げずオープンな局面になる 1...e5 Open Games が初心者や初級者に適していると言われる。

" break: ブレーク。前進してブロックされている敵PにPをぶつけて(特にRのために)ラインを開こうとすること。"  チェス用語小辞典(英和)より


French Defence の主な変化

1.e4 e6 2.d4 d5

3.exd5 Exchange Variation
3.e5 Advance Variation
3.Nc3 Nf6 Classcal Variation
3.Nc3 Bb4 Winawer Variation
3.Nd2 Tarrasch Variation
3.Nd2 または 3.Nc3 に対し 3...dxe4 4.Nxe4 Rubinstein Variation

白は French Defence 対策として 2.d3 d5 3.Nd2 から King's Indian Attack( KIA )へ持っていくこともある。


1.e4 プレイヤーなら French Defence 対策が必要となる。Mastering the Chess Openings Volume 4 の本で John Watson は初心者や初級者向きの French Defence 対策として e5 とするのを避け、早期ピース展開することを薦めている。
具体的には 1.e4 e6 2.d4 d5 3.exd5 exd5 4.Bd3 から 5.Nf3( または 5.Ne2 )そして 0-0 。

黒番で French Defence を使う場合は
3.exd5 Exchange Variation
3.e5 Advance Variation
3.Nc3
3.Nd2 Tarrasch Variation
への対策が必要となる。



1.e4 e6

1...e5 より消極的な感じがするが solid structure と呼ばれるように構造的に強いポーンストラクチャーとなる。

白 2.d4 に対して 2...d5 とするのをサポートできる。

1...e6 で黒マスビショップとクイーンの利きが開かれるのは 1...e5 と同じだが
Bc8 の展開を e6 ポーンが妨げるところが大きく異る。Bc8 をどのように活用するか黒にとって1つのテーマとなる。

e6 ポーンは白が Bc4 で f7 を狙うことを妨げいるのも特徴なので気づいておこう。

solid → リスクを最小限にして、驚くような Tactics よりも静かな Positional play を重視することを表す。




2.d4

メインライン。センターに2つのポーンを並べる理想形をつくる。センター支配に加え
Bc8 の利きが開かれスペースも増すのでピース展開しやすくなる。

黒は当然、白の理想形を崩しにかかる。




2...d5

e6 ポーンの守りがあるため、d5 にポーンを進め e4 ポーンを攻撃する。
e4 ポーンを攻撃することで白に対応を迫る。

2...c5 
Franco-Benoni と呼ばれる。3.d5 とすれば Benoni Defence( 1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 )へ transpose 可能

2...c5 から白が 3.Nf3 や 3.c3 とすれば Sicilian Defence へ transpose 可能

2...c5 3.c3 d5 4.e5 となれば Advance Variation になる


2...d5 に対して白は3つの対応法がある

3.exd5 ポーンを交換する( 単純化 ) 
3.e5 ポーンを進める( central bind )
3.Nc3 または 3.Nd2 ナイト展開とともに e4 ポーンを守る( センターのテンションを保ち、ピース展開する )

central 中央の
"bind:位を高くして相手の動きを封じる態勢。押さえ込み。序盤戦形ではMaroczy Bind(1.e4 c5 2. Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 g6 5.c4)が有名。" 
チェス用語小辞典(英和)より




3.exd5

Exchange Variation ポーンを交換して単純化する。黒は 3...exd5 とすることが多く
そうなれば対称形となる。

ドローになりやすく、白がドローをねらって使われることもあるが、マスターや上級者でなければ大抵勝敗がつくだろう。




3...exd5

自然な対応、e ファイルがオープンファイルとなり、ポーンストラクチャーが対称形となる。スペースが白黒互角となる。

e6 ポーンがなくなり Bc8 が展開できるようになったことは黒にとって利点となる。
白 e5 ポーンがないので Nf6 も可能。

3...Qxd5 で対称形を避けることも可能。3...exd5 となることが多いためサプライズ効果がある。4.Nc3 には 4...Bb4 とできる。4.c4?! は時期尚早で、白は c3 とできなくなり d4 ポーンが弱くなる。


4手目に進む前に Exchange Variation について知って役立つこと

対称形はドローになりやすい面があるが、白は先手の利があり、黒は対称形を避けるため白の展開を見て対応することができる。

白マスビショップの交換は黒にとって望むところ。何故なら白の Bd3 は黒のキングサイド攻めに良い働きをするため、黒は ...Bd6, ...Nge7, ...Bf5 などとして白マスビショップの交換を迫ろうとする。

一方、黒マスビショップは黒にとって良い働きをするため、黒は黒マスビショップを温存した方が良い。

相手と逆にキャスリングすればエキサイティングなゲームとなる。
黒なら ...Nc6, ...Bg4( または ...Bf5 ), ...Qd7, ...0-0-0 など。

黒は 4.Bd3 に対し 4...c5 として IQP( Isolated Queen's Pawn d ポーンが孤立ポーン )となることを好み、ダイナミックなゲームにしようとする。
4.Bd3 c5 は良いが
4.Nf3 c5?! では 5.Bb5+ で効率的にピース展開できる白が良い

勝機を得るために白も c2 - c4 として黒の d5 ポーンにプレッシャーをかけることがある。
黒が dxc4 とすれば白 d4 ポーンが孤立ポーンになるが、白はピースの活動性が高まり攻撃のチャンスが増える。

オープン e ファイル でルークやクイーンの交換が行われるが、もし e ファイル支配に遅れをとるようなことがあれば不利となるので注意。



4.Nf3
Morphy や Kasparov は 4.Nf3 を好んだ。

ナイトを活用するのに理想的な場所へ展開。Nf3 なら Ne5 へ展開可能。
センターにあるナイトは良い働きをするため黒は白の Ne5 を妨げたい。

4.Bd3
Ng1 → Ne2 とすれば 4.Nf3 Bg4 で Nf3 をピンされることを避けられる。
ナイトの展開位置を決める前に黒の出方を見られる。

4.c4 Nf6 5.Nc3 Bb4

4.Nc3 はあまり使われない。4...Bb4 や 4...Nf6 とするのが多く 4...c6 も良い。




4...Nc6
対称形でなくなる。クイーンサイドのナイトを先に展開させることは白よりもキャスリングが遅れるため抵抗があるかも知れないが、4.Nf3 と 4.Bd3 どちらに対しても 4...Nc6 とできるのが利点。

d4 ポーンを攻撃しているだけでなく、e5 を支配していることに注目。

4...Nf6
よく指される手で対称形となる。f6 にナイトがいる限り ...f6 として e5 を支配することはできないため、白は Ne5 として e5 のマスを活用することができる。

4...Bd6
5.c4 とするのが良いので白番なら知っておきたい手。cxd4 または c5 となるのは黒にとって厄介。 5...dxc4 とすると Queen's Gambit Accepted の変化に transpose する( 1.d4 d5 2.c4 dxc4 3.e3 e5 4.Bxc4 exd4 5.exd4 Bd6 6.Nf3 )。フレンチプレイヤーはそうなることを好まない。 

4...Bg4
良い手だが、4.Bd3 に対して別のアプローチを学ばなければならない。

4...Be6?
4手目または5手目で Be6 とするのはセンターの攻防に遅れをとる。
Bc8 は Bg4 に展開したり状況に応じて展開させた方が良い。




5.Bb5

積極的なピース展開。1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Ruy Lopez に似ているが、ポーンの位置が異なるのと Ruy Lopez ではオープンファイルがない。

e5 を支配している Nc6 をピンすることは白の e5 支配を強める。Bxc6 bxc6 となれば白はビショップを失い黒に half-open b ファイルを作らせることになるが、ポーンストラクチャーを崩せる。

Bb5 とすると黒も ...Bg4?! として Nf3 をピンすることができるが、先にピンしている白が有利。

5.Bd3
1.e4 e5 の Open Games では Bc4 が f7 を攻める手になるが、ここでは Bc4 とすることができない代わりに Bd3 が黒のキングサイドを攻める手となる。

5.c4
c3 で d4 ポーンを守れなくなった白に対し 5...Bb4+ とするのが良く 6.Nc3 と続くことが多い。
6.Bd2 では黒マスビショップの交換となりやすいが黒が若干良い。

5.Nc3 Bb4 6.Bd3 Nge7 7.0-0 Bg4 




5...Bd6

白のキングサイドを攻めるだけでなく、e5 を支配していることが重要。

6.Bxc6 bxc6 となることが想定されるが、6.c4 の方が良い。




6.c4

黒が Nge7 として Nc6 を守る前に、d5 ポーンを積極的に攻める。

6...dxc4 となれば 7.d5 としてピンされている Nc6 を攻められる。

6.0-0 Nge7 7.c4 dxc4 8.Bxc4




6...dxc4

7.d5 でピンされている Nc6 を攻められるが、黒は 7...a6 で Bb5 に反撃し問題ない。

6...Nge7?? は 7.c5 でビショップを失うことになる。

6...a6?! 7.Bxc6+ bxc6 8.c5 で白が良い。




7.d5

7.Bxc4 でポーンを取るより良い。ピンされている Nc6 を攻めることで黒はポーンストラクチャーが崩れることになる。




7...a6

この1手。Bb5 を攻めることで駒損を避けられる。




8.Ba4

最善手、Nc6 のピンを残し ...b5 を誘う。

8.Bxc4 は自然に感じられるが Nc6 のピンが外れ、8...Qe7+ 9.Be3 Ne5 などで黒が良い。

8.Bxc6+ bxc6 9.dxc6 も黒が良い。

8.Qa4 も考えられるが、8...axb5 9.Qxa8 Nb4 で黒が良い。




8...b5

...b5 とする前に 8...Qe7+ や 8...Bb4+ なども考えられるが素直に 8...b5 とする方が良い。




9.dxc6

気をつけたい局面。

9...bxa4 で白は2ビショップでなくなり黒がポーン1つ多くなるが、黒は孤立ポーンが4つできることになる。

ビショップを交換することを避け 9.Bc2?? とすれば 9...Nb4 でポーン1つ多い黒が有利。

9.Bxb4 axb4 10.dxc6 Ne7 も白は2ビショップでなくなり黒が良い。




9...bxa4

当然、駒損とならないようにする。




10.0-0

このタイミングでキャスリング。10.Qxa4 とするのは 10...Bg4 で黒は悪くない。




10...Ne7

白がキャスリングを済まし e ファイルがオープンになっているため黒もキャスリングの準備をする。Ne7 は c6 ポーンを攻撃し 11.Bg5? とされても 11...f6 とできる。

10...Bg4? 11.Re1+ Ne7? 12.Qd4 で白有利。


11.Qxa4 Rb8!! 12.a3 0-0 13.Nbd2 Rb5 などと続く。



補足

白2手目の変化



2.d3

白は French Defence に対して有効な King's Indian Attack にしようとする。
2.d4 に次いで使われる。黒番で French Defence を使うなら KIA について本で学んだり、マスターのゲームを見てどのような攻防になるか学んだ方が良い。

KIA は e4, d3, Nd2, Ngf3, g3, Bg2, 0-0 を異なった手順で指すオープニングシステム。 

"system:システム。定跡名で、明確な定義はないが、主に相手の応手に関わらず一方が組み上げていける形を指す。たとえば白c4-Nc3-d3-e4-Nge2-g3-Bg2の形をBotvinnik Systemと言う。" チェス用語小辞典(英和)より

2...d5 

白は 3.Nd2 または 3.Qe2 として、3...dxe4 からクイーン交換となることを避ける。

3.Nd2 c5 4.Ngf3 Nc6 5.g3 Nf6
3.Qe2 dxe4 4.dxe4 e5 5.Nf3 Nc6




2.Qe2 Chigorin Variation

2...d5 3.d3 Nf6 4.Nf3 Be7
2...d5 3.exd5 Qxd5 4.Nc3 Qa5 または 4...Qd8 で黒は悪くない

2...Nf6!? 3.Nf3 d5 4.e5 Nfd7 5.d3 で KIA に transpose する
2...Nf6!? 3.e5 Nd5 4.Nf3 d6 5.d4 c5!

2...c5 とすると黒は Sicilian Defence のようになる




2.Nf3  

2.Nf3 を使う人は結構いる

2...d5 3.exd5 exd5 で Exchange Variation に transpose することが多い

2...d5 3.Nc3 は Two Knights Variation

3.Nc3 Nf6 4.e5 Nfd7 5.d4 c5
3.Nc3 d4 4.Ne2 c5

3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 なら Rubinstein Variation に transpose

2.Nf3 d5 3.e5 もよく使われる
すぐに 3...c5 とすると 4.b4 cxb4 5.a3 または 5.d4 などの Gambit もあるので、Neil Mcdonald は 3...Bd7 を薦めている





2.f4 Labourdonnais Variation

2.f4 を使う人も結構いる

2...d5

3.e5 c5 4.Nf3 Nc6 5.c3( 5.d4?! Qb6 )
5...Nh6 6.Na3 Bd7

3.exd5 exd5 4.Nf3 Nf6( 4...c5?! 5.Bb5+ )5.d4 Bd6




2.e5 Steinitz Attack

2...d5 としたくなるが

2...d6 の方が良い、以下

3.exd6 Bxd6 4.d4 Nf6 5.Nf3 0-0 6.Bd3 Nc6 7.0-0 e5

3.d4 dxe5 4.dxe5 Qxd1+ 5.Kxd1 Nc6 6.Nf3 Bc5

3.Nf3 dxe5 4.Nxe5 Bd6




2.c4 

2...d5 3.cxd5 exd5 4.exd5( 4.e5 c5 )
4...Nf6 5.Bb5+!? Nbd7 6.Nc3 a6!? 

7.Ba4 b5 8.Bb3 Bb7

7.Bxd7+?! Qxd7 8.Nf3 Qe7+!




2.b3 Réti Variation

白はクイーンサイドにキャスリングする狙いで侮れない変化

2...d5 3.Bb2 dxe4 4.Nc3 Nf6 5.Qe2 Be7 6.0-0-0 0-0 7.g4!( 7.Nxe4?! a5 )
7...Nc6 または 7...a5 が良い

3...Nf6 とするのも良い




2.Nc3

2...d5 3.Nf3 なら Two Knights Variation になる

2...d5 3.exd5 exd5 なら Exchange Variation に

2...d5 3.d4 なら 2.d4 d5 3.Nc3 の形に

2...d5 3.f4 d4 または 3...dxe4 いずれも黒良し


参考文献

how to play against 1 e4 - Neil Mcdonald
starting out: the French - Byron Jacobs
A Rock-Solid Chess Opening Repertoire for Black - Viacheslav Eingorn
ATTACKING CHESS THE FRENCH - Simon Williams
starting out: king's indian attack - John Emms
French Defence - Wikipedia
Jim West On Chess: French Defense, Exchange Variation
King's Indian Attack - Wikipedia

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