Caro-Kann Defence


カロカン ディフェンス。このオープニングを分析した英国の Horatio Caro( 1862 ~1920 ) と オーストリアの Marcus Kann( 1820 ~ 1886 ) に因んで名付けられた。

Semi-Open Games としては同類の Sicilian Defence や French Defence よりも solid である一方、ダイナミックさでは劣ると言われる。

1...c6 とするのは 2...d5 とするのをサポートするためで、1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 となれば白黒同等なセンターポーンとなる。

2...d5 をサポートするのは 1.e4 e6 の French Defence と似ているが Caro-Kann Defence は Bc8 の展開を e6 ポーンが妨げてない。

黒はエンドゲームで好ましいポーンストラクチャーになることが多い。


Caro-Kann Defence の主な変化

1.e4 c6 2.d4 d5

3.Nc3  Classical Variation
3.Nd2  Modern Variation
3.exd5 Exchange Variation
3.e5  Advance Variation

3.Nc3, 3.Nd2 どちらも通常 3...dxe4 4.Nxd4 となるので大差ないが、黒が 3...g6 から ...Bg7 としてきた場合 a1-h8 ラインを活用しようとするのでその時に 3.Nd2 だと c3 として d4 ポーンを守れる。



1.e4 c6

2...d5 で e4 ポーンを攻撃するのをサポートする。

c6 ポーンがある限り Nb8 → Nc6 とできないが Nb8 は Bc8 を展開させた後 Nd7 に展開できる。

a5-d8 ラインが開かれ Q が展開可能となる。




2.d4

センターに2つのポーンを並べセンターを支配すると共にスペースを得る、Bc1 が展開可能となる。

ナイトとビショップが展開しやすい形になっている。

a5-d8 ラインが開いているため、2.d4 とすると ...Qa5 でチェックがかかる。
定跡で自動的に指すのではなく、...Qa5+ とされて大丈夫か? ...Qa5+ とされたらどうするか? オープニングを学び始めた段階ならそのようなことも丁寧に考えたい。




2...d5

e4 ポーンを攻撃することで白に対応を迫る。

Bc8 が展開可能となる。

2...g6
大抵の人が 2...d5 としてくるので 2...g6 とされると「何だこれは??」と思うかも知れない。中級者レベルになると遭遇することが考えられる。

2...g6 から ...Bg7 とすることで d4 ポーンにプレッシャーを与えるだけでなく a1, b2, c3 にも攻撃の可能性が生まれる。

2...g6 に対しては 3.Nc3 とすることが多いがそのような局面に慣れてないなら
3.Nf3 でも問題ないだろう。




3.exd5

ポーン交換を行う。ポーン交換する時は、ポーンを取った後 相手はどう応じてくるかを考えるだけでなく、ポーン交換後にキングサイド、クイーンサイドのポーン数がどうなるか、交換する前に考えておこう。

3.exd5 とした後のポーン数
クイーンサイド( a ~ d ) 白4 黒3
キングサイド( e ~ h )  白3 黒4

これがゲームにどう影響してくるか考えるのは中級者になってからでも構わないが
各サイドのポーン数を比較する習慣は早めに身につけよう。

e ファイルが half-open ファイルとなるだけでなく、d3 から h7 までのラインも開かれるので Bd3 とすればキングサイド攻めのプレッシャーとなる。




3...cxd5

素直に取り返す。c ファイルが half-open になる。Nb8 が c6 へ展開できるようになる。a4-e8 ラインが開くので黒は Bb5 でチェックされるようになる。

左右対称でないところが French Defence Exchange Variation と異なる。

3...Qxd5? は 1...c6 として d5 ポーンをサポートしたことが無意味になってしまう。4.Nc3 でクイーンが再度動くことにもなる。


白4手目は主に2つ

4.c4  Panov–Botvinnik Attack

黒の d5 ポーンを攻める積極的な変化、4.Bd3 より人気がある。

4...dxc4?! とすれば 5.Bxc4 でポーンを取りながらビショップを展開できるので
黒は通常 4...dxc4?! ではなく 4...Nf6 とする。

4.c4 とすれば d4 ポーンがいずれ孤立ポーンになるが、c4 ポーンと d5 ポーンを交換した後、白は open c ファイル と half-open e ファイルを活用する。

孤立ポーンは他のポーンで守れないだけでなく、孤立ポーンの1つ前のマスを他のポーンで攻撃できないので、そのマスが相手にとって活用ポイントになる
ことを覚えておこう。



4.Bd3 

ここからが本当の Exchange Variation。

ナイトではなくビショップを先に展開させることで Bc8 が Bf5 に展開することを妨げられる。




4...Nc6

d4 ポーンを攻撃しながらの展開。黒は e7 ポーンがまだ動いておらずキングサイドのピースも展開してないが焦らなくて大丈夫。




5.c3

d4 ポーンをしっかり守る。早期ピース展開を考えると 5.Nf3 としたくなるところだが 5...Bg4 とされると厄介。6.c3 で d4 ポーンを守ることはできるが、Nf3 をピンされていることは白にとって好ましくないので 5.c3 で d4 ポーンを先に守っておく。

Nb1 が c3 に展開できなくなるが Nb1 は Bc1 を展開させた後 Nd2 とできる。

d1 - a4 ラインが開かれるのでクイーンを後で b3 に展開できる。

5.Ne2 なら 5...Bg4 とされても 6.f3 とできるが、この場合 5...Nb4 で退路を塞がれた Bd3 を攻撃される。ビショップとナイトの交換を避けるため 6.Bb5+ とすると 6...Bd7 で白の Good Bishop と 黒の Bad Bishop 交換となるのは白にとって好ましくない。

5.Be3 でも d4 ポーンを守れるが、d4 ポーンの守りにビショップを使うよりも c3 で d4 ポーンを守り、Bc1 は主に f4 へ展開して活用する。




5...Nf6

e6 とする前に Bc8 を展開させたいので Nf6 で Bg4 とできるようにする。

d5 ポーンを守り、e4 を支配していることにも気づいておこう。

5...Qc7
白が 6.Bf4 とすることを妨げられる。b8 - h2 ラインで h2 にクイーンの利きが及び
b7 ポーンも守っている。

5...g6
黒はフィアンケットする場合もある。...g6 の後で ...Bf5 とすると黒の Bad Bishop と
白の Good Bishop の交換を迫れる。Bxf5, gxf5 となれば half-open g ファイルを
キングサイド攻めに活用できる。




6.Bf4

またビショップを展開させることに驚くかも知れないが、6.Nf3 Bg4 となることを避けている( 6.Nf3 も悪くない )。

Bc1 の展開を妨げることなく Nb1 → Nd2 とできる。b2 ポーンの守りがなくなったことも意識しておこう。

6.Ne2?! e5 7.dxe5 Nxe5 で Bd3 が攻撃される。




6...Bg4

...e6 とする前に Bc8 を展開しておく。6...e6?! では Bc8 が閉じ込められて活用しづらい。

6...g6 7.Nf3 Bg7 8.Nbd2 0-0 9.0-0 Nh5




7.Qb3

Bg4 の攻撃をかわすと共に b7 ポーンに攻撃を加え黒に対応を迫る。

7.f3 Bh5
後で ...Bg6 として白の Bd3( Good Bishop )と交換を迫ってくる。

7.Ne2 も悪くない

7.Qc2 Rc8 で ...Nb4 や ...Nxd4 の狙いが起こる



7...Qc8

クイーンで b7 ポーンを守る。

7...Qd7 も良い 8.Nd2 e6 9.Ngf6 Bxf3

7...Na5 8.Qa4+ Bd7 9.Qc2
Bg4 の後退は白にとって悪くないが 9...Qb6 10.Nf3 Bb5 となればビショップの交換を迫られる

7...b6?!
b7 ポーンはクイーンで守るか 7...Na5 とする方が良い。b7 ポーンは後で b5-b4 と
進め Minority Attack に使ったりするので 7...b6?! は不要。

Minority Attack:マイノリティ アタック。相手よりもポーン数が少ないところでポーンを進め、相手ポーンを崩し弱くさせる攻撃。クイーンサイドで起こることが多い。




8.Nd2

8.Ngf3?! とすると 8...Bxf3 9.gxf3 でダブルポーンができるのは白にとって良くないため、Nd2 で Ngf3 とするのをサポートする。




8...e6

d5 ポーンを守り Bf8 が展開可能となる。

8...g6 と 8...Bh5 に対しては 9.Ngf3 で問題ない

8...Qe6+ を使ってくる人はあまりいないだろうが突然チェックされると意表を突かれるかも知れない。9.Be3 または 9.Ne2 とすれば OK




9.Ngf3

理想的な場所へ展開、キャスリング可能となる。キャスリング前に4つの
マイナーピースを全て展開している、このような状況になるのも面白く学ぶこともあるだろう。




9...Be7

キャスリング可能となる。白側ビショップの攻撃的な位置に比べ、防御的な位置である。

9...Nh5 10.Be3 Bd6 とすることもできるが 11.Ne5 Nxe5?? 12.dxe5 Bxe5 13.Qa4+ で Bg4 を失うので注意 11...Nf6 としなければならない




10.0-0

自然なタイミングでキャスリング。

10.Ne5 この場合は 10...Nxe5 とできるし 10...Bh5 も可能
慣れないうちは 10.0-0 が無難

10.0-0-0?! とすると防御が難しくなる




10...0-0

黒もキャスリングを済ませる。

始めはこの局面からどのように攻めていったら良いか分からないかも知れないが
そのような場合はマスターのゲームを見てその後の展開を知るのが参考になる。

その後の展開のゲーム↓
http://www.chessgames.com/perl/chess.pl?node=1406948

白はキングサイド攻め、黒はクイーンサイド攻めが1つの目安。
白は Ne5 や Rfe1 とすることが多く、黒は Bg4 → Bh5 → Bg6 から白の Bd3 と
交換を迫まる。


11.Rfe1 Bh5 12.Ne5 Nxe5 13.Bxe5 Bg6 14.Bxg6 hxg6 などと続く


補足 白2手目の変化



2.c4
白が d4 とするのを遅らせるところが Panov-Botvinnik Attack と異なる

2...d5 3.cxd5 cxd5( 3...Nf6!? 4.Nc3 )4.exd5

4...Nf6 5.Nc3( 5.Bb5+ や 5.Qa4+ もある )
5...Nxd5 6.Nf3
5...g6 6.Bc4!?

4...Qxd5 5.Nc3
5...Qd6 6.d4
5...Qd8 6.d4
5...Qa5 6.d4
5...Qe5+?! 6.Be2

Caro-Kann player は 2...d5 を好むが 2...e5!? も良い

2...e5!?
白が 2.d4 としなかったことを活用する

3.Nf3
3...Qa5!? 4.Be2 Nf6 5.0-0 Nxe4 6.Re1 d6 7.d4

3...d6 4.d4
4...Bg4 5.dxe5!
4...Nd7 5.Nc3 Ngf6 6.Be2
4...Qc7 5.Nc3

2...e6!? も悪くない
3.Nf3 d5 4.cxd5 exd5 5.exd5 cxd5 6.Bb5+ Nc6 7.Qe2+




2.Nc3 d5 3.Nf3 Two Knights Variation 
( 2.Nf3 d5 3.Nc3 の手順もある )

白が2つのナイトを展開しているのに対して黒はまだピース展開してないが
オープンな局面ではないため、そのような場合は展開の早さよりも質が問われる。

3...Bg4
3...dxe4 や 3...d4 より好まれる。

4.h3 Bxf3
4...Bh5 とするより Bxf3 とした後 e6 とする。黒はビショップを失うがセンターポーンは残ったビショップの展開を妨げることがなく好形。

5.Qxf3
5...e6 6.d4 Nf6
5...Nf6 6.d3 e6




2.d3
白は King's Indian Attack にする狙い。KIA は French Defence や ...e6 とする Sicilian に対してよく使われるが ...e5 としてセンターを支配できる  Caro-Kann に
対してはあまり使われない。

2...d5 3.Nd2 e5 4.Ngf3 Bd6 5.g3 Nf6 6.Bg2 0-0 7.0-0 Re8



参考文献

starting out: the caro-kann - Joe Gallagher
the Caro-Kann move by move - Cyrus Lakdawala
attacking with 1 e4 - John Emms
starting out: king's indian attack - John Emms
Caro–Kann Defence - Wikipedia

コメント