Modern Defence


モダン ディフェンス。オーストリアのグランドマスター Karl Robatsch に因み Robatsch Defence とも言われる。

hypermodern chess opening の1つ。1.e4 1.d4 1.c4 1.Nf3 などの手に対応できる万能な防御法( universal system of defence )。あいまいで複雑な局面になりやすい。1.b3 に対しても使えるが好ましくはない模様。

白に e4, d4 の理想的なポーンセンターを作らせておき、黒はセンターにポーンを置くよりも回りからセンターに影響を与えていく狙いを持つ。

Pirc Defence と関連性が高いが、Modern Defence では Ng8 の展開を遅らせること、Ng8 を f6 だけでなく e7 や h6 に展開することが Pirc Defence と異なる。
さらに 1.e4 d6 2.d4 Nf6 では e4 ポーンが Nf6 に攻撃されるため白は e4 ポーンの
守りを強いられるが 1.e4 g6 2.d4 Bg7 では白が 3.c3 や 3.c4とすることもできる。
黒が ...Nf6 としてなければ h5 の守りが弱くなるため白は早期に h2-h4-h5 とすることも可能。

Modern Defence をこれから学ぼうとする場合、Pirc Defence に熟練してから Modern Defence を学ぶようにした方が良いと starting out: the pirc / modern の本で Joe Gallagher は述べている。



1.e4 g6

1...g6 とすると白に 2.d4 を許すが 2...Bg7 とすれば f6 にナイトがいないため a1-h8 ラインを活用できる。




2.d4

d4, e4 にポーンを並べることは白にとって理想的であるが黒には当然戦略がある。

2.Nc3 Bg7 3.f4 c5 または 3...d6
2.h4 d5! 3.exd5 Nf6
2.f4 d5! 3.e5 c5( 3.exd5 Nf6!? )
2.Bc4 Bg7 3.Qf3 e6




2...Bg7

f6 にナイトがいないため Bg7 が d4 を攻撃しているだけでなく、e5, c3, b2, a1 に
プレッシャーが増す。

f6 にナイトがいなければ 白の e5 で Nf6 を攻撃されることがなく、ナイトが g8 にいれば白は Be3 + Qd2 から Bh6 とすることができない。

2...d6
白が Be3 + Qd2 から Bh6 として黒マスビショップの交換を迫ってくることが考えられるため
Bf8 を展開しないでおけば Bh6 とされたときに Bf8xh6 とできるので Bg7xh6 とするより1手得する。
2...d6 3.Nc3 c6 4.Be3

2...c6
黒がいつも 2...Bg7 とは限らないので対応できるようにしよう。
2...c6 3.Nc3 Bg7 4.Be3




3.Nc3

...g6 に対して Nc3 とするのは1つのパターン、Be3 + Qd2 から Bh6 とする狙いが
あり 0-0-0 しやすくなる。黒が 0-0 して 白が 0-0-0 ならば白はキングサイドでポーンを進め攻撃できる。

d4 ポーンを c3 として守れない面もある。

3.Nf3
白が Nc3 とすると黒は ...a6 から ...b5, ...Bb7, ...Nd7, ...c5 としてクイーンサイド攻めの手段があるが、Nc3 としなければ c3 とできるので黒の ...a6 を無効にできる。
3.Nf3 d6 4.Be2 Nd7

3.c3
d4 ポーンを守っているだけでなく、b2 ポーンが c3 ポーンを守っているため
a1-h8 ラインでBg7 の活用度は減少する。一方 Nb1 が Nc3 に展開できなくなる 。
Positional Player に好まれる変化。
3.c3 d6 4.Nf3 Nf6 5.Bd3 0-0 6.0-0 Nc6

3.f4 Three Pawns Attack
Nc3 としてないため c3 として d4 ポーンをサポートできる。
3.f4 d6 4.Nf3 c5
3.f4 c5! 4.d5 d6

3.h4 d5! 4.exd5 Qxd5 5.Nf3 Bg4

3.c4 Averbach Variation
1.d4 g6 2.c4 Bg7 3.e4 d6 4.Nc3 または
1.d4 g6 2.c4 Bg7 3.Nc3 d6 4.e4 の手順となることが多そう。

3.c4 d6 4.Nc3 に対し 4...Nf6 とすると King's Indian Defence になる。
黒として KID を避けるのであれば 4...e5! が選択肢の1つ。

3.c4 d6 4.Nc3 e5! 5.dxe5 dxe5 6.Qxd8+ Kxd8 キャスリングできなくなっても黒は
悪くない。5.d5 Nd7 6.Nge2 h5! 7.h4 Nh6!?




3...d6

c8-h3 ラインが開き Bc8 の利きが及ぶ。
c5, e5 の黒マスを支配している( Bg7 も黒マスを支配している )。

...c5 または ...e5 とするとき d6 ポーンが支えとなる。
...Nf6 とすると Pirc Defence に transpose

3...c6
...d5 と続ける狙いがある。
...g6, ...c6, ...d5 は solid position をもたらす。狭いスペースを避け手堅く指したい人向き。 3...c6 4.Be3 d5 5.Qd2 dxe4 6.Nxe4 Nd7 7.0-0-0

3...c5
4.Nf3 cxd4 5.Nxd4 となれば Sicilian Defence に transpose
4.d5 となれば Benoni Defence( 1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 など )の類となる
4.dxc5 Qa5 5.Bd2 Qxc5 6.Nd5


白4手目は主に 4.Be3 4.f4 4.Nf3 の3つだが下記変化もあり得る

4.Bc4
4.Nge2
4.g3
4.Bg5
4.h3
4.h4

黒ならば各変化への対応が問われる



4.Be3

クイーンサイドのビショップを展開することで 0-0-0 する可能性が生まれる。
白はこの後 5.f4 5.Qd2 5.Nf3 など柔軟な指し方ができる。

Qd2 + Be3 から Bh6 として黒マスビショップ交換の狙いもあるが、Ng8 が展開して
ないためすぐに Bh6 とすることはできない。

4.Be3 で d4 ポーンを守る一方、b2 ポーンの守りがなくなることも気づいておこう。
Pirc Defence と異なり Nf6 がないため Bg7 が a1-h8 ラインに及ぼしている影響を
常に考えよう。




4...a6

...b5 とするのをサポートできる。続けて ...Nd7 から ...c5 として白 d4 ポーンと黒 c5 ポーンを交換しクイーンサイド攻めの狙いがある。
これは Sicilian Defence の Dragon Variation( 1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6 ) に似ている。

a6, d6, g6 ポーンの形がドラゴンの背に似ており、Bg7 はさながらドラゴンが吐く炎となる。

4...c6
こちらも ...b5 をサポートするため。
4...c6 5.Qd2 b5 6.Bd3 Nd7 7.Nf3

4...Nf6
Pirc Defence に transpose
悪くないが白に Qd2 から 0-0-0, Bh6 とするチャンスを与える。




5.Qd2

0-0-0 可能となる。

黒がどちらにキャスリングするかまだ分からないため白は黒の出方を見る。

5.a4
白は 0-0-0 するのを止めたようなもので 5...b6 5...Nf6 5...Nc6 などで黒好形。

5.f4
Austrian Attack ( 4.f4 ) に transpose する。白は e4 ポーンを f3 で守れなくなった
ため黒は b7-b5-b4 と Bb7 で e4 ポーンにプレッシャーをかけてくる。
5.f4 b5 6.Bd3 Bb7 7.Nf3 Nd7 8.e5

5.Nf3
この場合白はめったに 0-0-0 せず Bd3, 0-0, Qd2 と続け a4 で 黒 b5 ポーンを攻撃する。一方 黒は ...b5, ...Nd7, ...Bb7, ...c5 などとする。

5.h4
白が早期 h2-h4 としてきた場合の対策が黒には必要。
5.h4 Nf6 6.f3 b5 7.Qd2 Nbd7 8.0-0-0 Bb7




5...Nd7

Bc8 の展開を妨げているように見えるが ...Bb7, ...Rc8, ...c5 とする狙いがある。

5...b5 6.a4! b4 7.Nd1 a5 8.c3


この後、白は主に6つのプランがある

1) h2-h4-h5。黒が ...h5 としてきた時は Ng1-Nh3-Ng5
2) f3, 0-0-0, Nge2 または h4 の 後 Nh3
3) g2-g4, 0-0-0, h2-h4-h5
4) a2-a4( 5...b5 の場合 )。黒 b5-b4 の後、白 Nd1, c3, f3, Bd3, Ne2 など
5) a2-a4 で 黒 b7-b5 を妨げる( 5...Nd7 の場合 )
6) Nf3




6.f3

黒 ...a6 の変化において白 e4 ポーンが弱くなるため f3 で e4 ポーンを守る
( b7-b5-b4 で e4 ポーンを守っている Nc3 を攻撃されるのと、Bb7 で e4 ポーンを攻撃されるので )。

h2-h4-h5 でキングサイドを攻める狙いもあるが黒が 0-0 しなければ効果は減少する。

Ng1 が Nf3 に展開できなくなるマイナス面もある( ピース展開に影響 )。

6.h4! 攻撃的な変化
6.h4 h5 7.Nh3!? b5 8.Ng5 Bb7

6.Nf3 b5 7.Bd3 Bb7 8.a4 b4 または 8.0-0 c5

6.a4 に対して黒は 6...b6, ...e6, ...Ne7, ...Bb7 とする Hippopotamus
( カバ。オープニング名 )の形にするのが有効。




6...b5

...b4 で Nc3 を攻撃できる。...Bb7 とできるようになる。

白がポーンでセンターを支配しているのに対し黒は回りからセンターに影響を及ぼす形になってきた。

...a6 は ...b5 をサポートするためだが、前述のように ...b5 とする前に白が a4 としてきた時は ...b6 とする場合もある。




7.h4

キャスリングする前にキングサイドにプレッシャーをかけていく。
これにより 0-0-0 する可能性が高まる。

h4-h5 を妨げようとして黒が ...h5 としてきた場合は Ng1 → Nh3 → Ng5 とする狙いがある。

白黒ともキャスリングしてない状態で白はキングサイド攻め、黒はクイーンサイド攻めというより両サイドに対応しつつセンターに影響を及ぼそうとしている感じ。

このような戦い方は中級者以上に向いていると思われるがオープニングの勉強に
なると思う。

7.a4
...b4 を誘う( ...bxa4 だと黒は a ポーンが孤立ポーンになり、白 は a ファイルが
half-open ファイルになるので黒の a ポーンが弱くなる  )。
7...b4 に対し白は 8.Nd1 として後でこのナイトを f2 に運び e4 をサポートするのと
キングサイド攻撃に活用する。
7.a4 b4 8.Nd1 c5 9.c3

7.g4
7.h4 の変化に transpose することが多い。7.h4 の場合 黒は 7...h5 として g4 を妨げることができるが、...h5 とすると白に Ng5 とされる面もある。
7.g4 Bb7 8.h4 h5 9.g5

7.0-0-0
0-0-0 するとキングサイドでポーンを進めて攻撃しやすくなる一方、相手にクイーンサイドから攻められることになる。始めは 0-0 する方が無難だが中級者になったら
0-0-0 する戦い方を覚えるのも勉強になる。
7.0-0-0 Bb7 8.h4 h5 9.Nh3 Rc8




7...Ngf6

0-0 可能となるが白のキングサイド攻めが強力なので 0-0 するためではない。
白の指し手により対応が異なってくるが Nd7 → Nb6 とすると d7 が空くので Nf6 → Nd7 そして ...c5 とする狙いがある。

Bg7 の利きがブロックされるので白は Bg7 への警戒が弱くなりやすい。
Nf6 が動けは Bg7 の利きが再び有効になるため警戒を怠らないようにしたい。
 
7...h5 8.Nh3 Ngf6 9.Ng5 Nb6

7...h6
h4-h5 に対して ...g5 とできる。
7...h6 8.0-0-0 Bb7 9.h5 g5




8.g4

...h5 とされる前に g4 としておく、f3 ポーンの支えがあるため g4 とできる。
Qd2, Be3, Rh1, g h ポーンによるキングサイド攻め。

g2 にポーンがなくなったため ...Bb7 とされると f3 ポーンや Rh1 が攻撃される可能性があるため注意しておこう。

8.0-0-0
このタイミングでキャスリングは悪くない。
8.0-0-0 Bb7 9.g4 h6 10.Nh3 Nb6

8.Bh6?
白としては黒マスビショップの交換をしたくなるがクイーンサイドで反撃されることにつながる。
8.Bh6? Bxh6 9.Qxh6 c5 10.Nge2 Qa5 11.Qd2 Bb7




8...h6!?

8.g4 に対してキングサイドが弱くならないようにするための手、黒マスビショップの
交換も避けられる。

h4-h5 に対して ...g5 とできる。9.g5? に対しては 9...hxg5 10.Bxg5 で黒有利。

黒はキャスリングしないか、10 ~ 30手先!でキングサイドにキャスリングする場合もある。
キャスリングが遅れると徐々にキングが危険な状態に陥っていくことが多いが
Modern Defence ではキャスリングしない黒キングをなかなか攻められないこともある。

8...h5? 9.g5 で Nf6 が望まない場所へ追いやられる。




9.0-0-0

白が先にキャスリング。これから攻めていきたいところだが白はなかなか攻めづらく
逆にクイーンサイドで黒にジワジワと攻められる。

9.Nh3 Nb6! 10.0-0-0 b4! 11.Nb1 a5( 11.Ne2?! Nc4 で白は有用な黒マスビショップをナイトと交換になる )




9...Bb7 

a8-h1 ラインの利きが白にとって厄介となる。c8 が空くので Rc8 とできるようになる。

9...Nb6 10.Nh3 b4!? 11.Nb1 a5 12.Nf4 Nfd7!

9...b4? 時期尚早、白は 10.Nce2 または 10.Na4 で問題ない。




10.Nh3

Nh3 → Nf4 → Nd3 と運んだり、...h5 とされた時 Nh3 → Nf2 で g4 を守ることも
可能。

Nh3 で f3 ポーンの守りがなくなるため、...Bb7xf3 とされないよう注意したい。

10.Kb1
0-0-0 した場合、a2 ポーンを守っている Nc3 は ...b4 で追いやられるため
Kb1 で a2 ポーンを守る。Kc1 と Qd2 が斜めに並んでいると場合によっては
...Bh6 でスキューアされることもあるため、Kb1 はこれを回避することにもなる。
Nc3 → Nb1 とできなくなるため、...Nb6 とされた時は a3 で ...b4 を防ぐこともある。
10.Kb1 Nb6 11.a3 c6 12.h5 g5




10...Nb6

0-0-0 した白に対しクイーンサイドでナイトを活用する。

...Na4 または ...Nc4 が可能となる。

...b4 で白が Nc3 → Ne2 とした場合 ...Nc4 として Be3 との交換を迫れる。

d7 が空くため Nf6 → Nd7 が可能となる( Nf6 が移動すれば Bg7 の利きが開く )。

白が e5 とすると d5 が黒にとって強いマスとなる。


11.a3 h5 12.g5 Nfd7 13.Nf4 0-0 などと続く


参考文献

The Modern Defence move by move - Cyrus Lakdawala
Tiger's Modern - Tiger Hillarp Persson
starting out: the modern - Nigel Davies
starting out: the pirc / modern - Joe Gallagher
attacking with 1 e4 - John Emms
Modern Defense - Wikipedia

コメント