Scandinavian Defence


スキャンダネイヴィアン ディフェンス。Center Counter Defence とも言われ、古い
歴史をもつオープニングの1つ。Scandinavian Defence の名は文書としては 1994年 2月12日の The Times( 英国の新聞 )紙上で現れた( GM Raymond Keene による記事 )。Scandinavia のマスター達の分析により 1.e4 に対抗できると示されたことに因んでいるのか不明。

初手から e4 ポーンに攻撃を仕掛け exd5 を誘う( 白は大抵 2.exd5 とする )。
その後は 2...Qxd5 と 2...Nf6 の二手に分かれ、それぞれの戦略がある。

黒は ...e6 で Bc8 の展開が妨げられる前に Bc8 を展開させ、その後 他の駒も問題なく展開できれば好形を得られる。展開で白より少し遅れを取るがピースの活動性が重要となる。

1.e4 d5


白に 2.exd5 とすることを誘う。2.exd5 の後、黒は d5 ポーンをピースで取り返し
オープン d ファイル を活用する狙いがある。

白 e4 ポーンがなくなれば黒はピース展開しやすくなる一方、ポーンをピースで取り返すために1手使わなければならない。

Bc8 が展開できるようなったこと、黒キング が Bb5+ とされる可能性にも気づいて
おこう。


2.exd5


素直に取るのが無難。

2...Qxd5 なら 3.Nc3 でクイーンを攻撃しながらピース展開でき、2...Nf6 なら 3.d4 3.Nf3 3.Bb5+ が良い手。

e ファイルが half-open ファイルとなる。

白2手目変化については 補足1 で扱う。


黒 第1の選択

2...Qxd5 または 2...Nf6 とするか?

初めは後で d5 ポーンを取り返すことになる 2...Nf6より 2...Qxd5 の方が無難。
白ならば両方への対策が必要となる。

2...Nf6 について
d5 ポーンを Nf6 で取り返えし、その後 白 d4 ポーンにプレッシャーをかけ、...e5 や ...c5 の pawn break を狙う。

3.c4 で d5 ポーンを守る手は良くないようで 3.d4  3.Nf3 3.Bb5+ が良いとされる。
さらに 3.d4 では 3...Bg4 の Portuguese Variation になる場合があるが、3.Nf3 ならその変化を避けられる( 3.Nf3 Bg4 4.Bb5+! )。

ありがちな 3.Nc3 は悪くはないが良くもない。


2...Qxd5


クイーンが早期に展開すること、同じ駒が2回動くことはオープニングにおいて普通
良くないとされるが、3.Nc3 を誘い白が d4, c4 2つのポーンを並べてセンターを支配することを妨げようとする。

2...c6
マスターレベルではめったに使われないが、日ごろのゲームで遭遇する可能性も
あるため、白としてある程度対策をとっておきたい。
2...c6 3.dxc6 Nxc6 4.Nf3 e5 5.Bb5( 5.Bc4? e4 で黒有利 )
5...Bd6 6.Nc3 Nf6 7.h3



3.Nc3


クイーンを攻撃しながらピース展開。再度クイーンを動かすことになり黒は展開で遅れをとる。

3.Nf3
クイーンを攻撃することなくキングサイドのナイト展開。3...Bg4 で Nf3 をピンされることが予想できるが 4.Be2 とすれば問題なし。だだし 4.h3?? とすると 4...Qe4+ とされ 5.Be2 Bxf3 6.gxf3 または 5.Qe2 Bxf3 6.gxf3 で白劣勢となる。

3.Nc3 の方が多いため、白としては 3.Nf3 を使うのも良く、黒としては 3.Nf3 の対策も必要となる。
3.Nf3 Bg4 4.Be2 Nc6 5.d4 0-0-0 6.c4 または 6.Be3

3.d4 は 3...e5! で白は先手の利が無くなる。
3.d4 e5! 4.dxe5 Qxd1+ 5.Kxd1 Nc6 6.Bf4 Bc5

3.c4? Qe4+ 4.Qe2 Qxe2+ 5.Bxe2 Nc6 6.Nf3 e5
backward d2 ポーンが問題となり黒が良い。


黒 第2の選択 ( 3.Nc3 に対して )

3...Qa5 と 3...Qd6 が Main Line

白としては 3...Qd8 と 3...Qe5+ 3...Qe6+ に対してもある程度対策をとっておきたい。


3...Qd6
クイーンの位置として見慣れない感じがするが他の駒の展開を妨げることがなく d4 ポーンにプレッシャーもかかる。Qa5 や Qd8 よりクイーンの活動性が高く、0-0-0 も
しやすい。

Qd6 は Nb5 や Bf4 で攻撃を受けやすいと言われるが、Qa5 も b4 や Bd2 で攻撃されやすい面を持っている、しかしこのことはあまり述べられない。

3...Qd6 に対して白は d4, Nf3, g3, Bg2, 0-0 そして適切なときに Ne5 とするのが
好形の1つ。

3...Qd6 4.d4 Nf6 5.Nf3 a6 6.g3 Bg4 7.h3 Bh5 8.Bg2 Nc6 9.0-0 0-0-0 など


3...Qd8
消極的だが悪くない。クイーンが攻撃を受けにくい一方、展開で遅れる。ただし白は油断してはならない。

3...Qd8 4.d4 Nf6 5.Nf3
5...Bg4 6.h3 Bxf3 7.Qxf3 c6 ( 7...Qxd4?? 8.Qxb7 )
5...Bf5 6.Bd3 Bxd3 7.Qxd3 c6 8.0-0 e6
5...c6 6.Bc4 Bf5 7.Ne5 e6 8.g4


3...Qe5+
Nf3 で再度 黒クイーンは攻撃される可能性が高い。黒クイーンの位置がゲームにどのような影響を与えるかよく観察しよう。

3...Qe5+ 4.Be2 c6 5.Nf3 Qc7 6.d4 Bf5 7.0-0 Nf6


3...Qe6+
e7 ポーンの展開を妨げており疑問手に思えるが 4.Be2 に対して 4...Qg6 として g2 ポーンを攻撃する狙いがある。

3...Qe6+ 4.Be2( 4.Qe2 より良い )
4...Qg6 5.Nf3 Qxg2 6.Rg1 Qh3 7.d4
白は g2 ポーンを失ったが展開で勝っており好形、しかし油断できない。


3...Qa5


白が d4 とすれば Qa5 が Nc3 をピンすることになる。...Bb4 や ...Ne4 と協力して Nc3 にプレッシャーを与えられる。...c6 とした後 d8 や c7 にクイーンを後退させることができる。Qa5 の利きが 5th ランクに及んでいることにも気づいておこう。

定跡で 3...Qa5 とすぐに指せるが 3.Nc3 に対してどこにクイーンを動かすのが有効か? そこに動かす理由は何か? を考えると面白いし理解も深まるだろう。 

3...Qa5 で主となる黒側の戦略は Scandinavian bishop と呼ばれる白マスビショップ、2つのナイト、ポーンで白マスを支配すること。これは Light-Square Strategy と
言われる。

d5 を拠点に白マスを支配し白側の動きを封じようとする。特に重要となるマスは d5 と e4 で、他の白マス支配と連係して、白側のビショップペアに対抗する。

また 3...Qa5 以降の手順が重要なテーマとなり以下項目に関連する。

1) 白早期 Nf3 そして Bc4
2) 白早期 Nf3 そして Bf1 を c4 以外に展開
3) 白が Nf3 とせずに Bc4
4) 白早期 Bd2 で Qa5 へ攻撃の狙い

3...Qa5 で白側の戦略に pawn breaks がある。

特に効果的なのは d4-d5 の pawn break で、展開で遅れをとっている黒に対しオープンな局面にして有利を得ようとする( 黒としてはオープンな局面になることを阻止しなければならない )。

他にも白側は f4-f5, b4-b5 の pawn breaks がある。


4.d4


まずはセンターを支配しピースの活動性を高める。両ビショップの利きが開かれている。

Nc3 が Qa5 にピンされた状態になるので注意しよう。

4.d4 が Main Line だが慣れてきたら他の変化を試してみるのもいいかも知れない。黒は 4.d4 以外の変化にも対応できるようにしよう。後述の 補足2 参照。



4...Nf6


白の指し手によっては ...Nc6 とする場合があり、4...c6 では ...Nc6 とできなくなるため先に ...Nf6 とする。

白が Ng1 の展開場所を決めてないうちは ...c6 を避ける。

4...c6
...Nf6 としなければ白が Nc3 → Nd5 → Nxf6 としてくるのを避けられる。Ng8 → Ne7 に展開する場合もある。キングサイドで白にスペースを与える欠点もある。

4...c6 5.Bc4 Bf5
6.Bd2 e6 7.g4 Bf6 または 7.d5 cxd5 8.Nxd5 Qd8( 8...Qc5!? )
6.Qe2 e6 7.g4!( 6...Nf6?! 7.Bd2 e6 8.d5! )

4...e5
最善手と思われていた時代もあったが、局面がオープンになり、両サイドのポーン数が 3 対 3 になると、展開で勝る白が有利となる。
4...e5 5.Nf3 Bb4 6.Bd2 Bg4 7.a3 ( 5...Bg4 6.Bc4 )



5.Nf3


理想的な場所へ展開、後で Ne5 とすることが可能。

Nf3 とすると Bg4 とされることが考えられるため何となく指しづらいが、そうなっても
問題ない。5...Bg4 6.h3 Bxf3 7.Qxf3 ではビショップを失った代償がない。 6...Bh5 に対しては 7.g4! Bg6 8.Ne5 e6 9.h4!とできる。

5.Bc4 と 5.Bd2 の主なアイデアは Ng1 → Ne2 → Ng3 として、黒の ...Bf5 を攻めること、f3 にナイトがないので f2 → f4 → f5 とポーンを進めて黒のポーンストラクチャーを崩すことなど。

5.Bc4 と 5.Bd2 はトリッキーで混乱しやすいため、黒としては対策が必要になる。



5...Bf5


...e6 とする前に Bc8 を展開させて活用する。Bf5 は攻撃を受けた場合 g6 へ後退できる。

...c6 としてないため場合によっては ...Nc6 から ...0-0-0 とすることも可能。

5...c6
人気のある手。大抵 5...Bf5 の変化に transpose する。
5...c6 6.Bc4 Bf5 7.Bd2 など

5...c6 なら 6.Ne5 とされた時、6...Bf5 の代わりに 6...Be6!? とすることも有効。
...Be6 とすると e7 ポーンの展開を妨げるが、白が Bc4 としてきたときに白マスビショップの交換が可能。Bf8 は ...g6 から ...Bg7 として活用できる。

5...Ne4?!
同じピースを2度動かすことで展開が遅れる。
6.Bd2!? より 6.Bd3! が良い。

5...Ne4?! 6.Bd3! Nxc3 7.bxc3
7...Qxc3+ で白はポーン1つ失うが 8.Bd2 とすると展開で勝る白が好形。
7...g6 8.0-0 Bg7 9.Re1 0-0 10.Bd2

5...Nc6? 6.Bd2! Bg4 7.Nb5 Qb6 8.c4 ( 6...a6 7.Bc4 Qh5 8.Ne5! )



6.Bc4


活用できる場所へ展開、キャスリングが可能となる。

Bc4 は d5 に利きが及んでいるため d4-d5 の pawn break や Bd2 + Nd5 で Qa5 にディスカバードアタックなどに役立つ。Bc4 は他の駒に守られてないことを注意しておこう。

6.Be2 消極的
6.Bd3 白 Good Bishop と 黒 Bad Bishop の交換につながる
6.Bb5+?! c6 先手の利を失う 



6...e6


Bc8 を展開したので今度は Bf8 が展開できるようにする、キングサイド へ キャスリングをするために必要な手。

e6 ポーンが f7 ポーンに守られているため、白が Bc4 と Ne5 で f7 を狙うことへの防御となる。

6...c6 7.Bd2 e6 なら 6...e6 7.Bd2 c6 と同じ局面になるが、6...c6 に対して 7.Ne5 e6 8.g4 Bg6 9.h4 の変化になる場合もある。



7.Bd2


Qa5 に対して Ne5 や Ne4 のディスカバードアタック狙いがある。 先手の利を生かし黒に対応を迫る。

b2 ポーンの守りがなくなることも意識しておこう。

初心者~初級者なら 7.0-0 でも構わないが、中級者になったら 7.Bd2 を指したい。

黒ならば白が 7.0-0 から Bf4 としてくる変化にも対応が必要。

7.Ne5?!
e6 ポーンが Bc4 の f7 への利きを防いでいるため、7...Nbd7 で互角の局面になる。7...c6?! としてしまうと 8.g4 で白がまた良くなる。

6...c6 なら前述のように 7.Ne5 とするのは良く
6...c6 7.Ne5 Nbd7?? は当然 8.Bxf7+ となるので 7...e6 これが 8.g4 の手を可能とする。

7.d5?? exd5 8.Bxd5 Nxd5 9.Qxd5 Qxd5 10.Nxd5 Na6
オープンな局面になりビショップペアの黒側が有利。



7...c6


b5, d5 の白マスを支配。白が d5 とするのを抑える。

Nc3 が動いて Qa5 がディスカバードアタックされた時のために、c7 や d8  への退路を作る。

d ファイルが half-open で c6, e6 のポーンストラクチャーは Caro-Kann Defence や他の定跡でも見られる。

Nb8 が c6 へ展開できなくなるが、Nb8 は d7 へ展開できる。

7...Bb4
...c6 でクイーンの退路を作る代わりに ...Bb4 とする場合もある。
7...Bb4 8.a3 Bxc3 9.Bxc3 Qb6 10.d5

7...Nbd7?? 8.Nd5 で白優勢


白8手目は主に3つ
8.Nd5  8.Ne4  8.Qe2

マイナーな変化
8.Nh4
Bf5 を攻撃しナイトとビショップの交換可能、しかし 8...Bg6 9.Nxg6 hxg6 で h ファイルが開き黒は悪くない。

8.Ne5
8...Nbd7 で問題なし。

8.h3  8.a3  8.0-0
黒に問題をもたらせないため、黒の展開を容易にする。

白としては 8.Nd5  8.Ne4  8.Qe2 のどれかを選択すればよいが、黒ならばマイナー変化への対応も必要。


8.Nd5


Scandinavian Defence では Nc3 を活用しづらいため、ディスカバードアタックを利用して Nf6 と交換する狙い ※

Qa5 が d8 に後退することを強いり、9.Nxf6+ で黒は 9...Qxf6 か 9...gxf6 の選択を迫られる。

8.Ne4
このディスカバードアタックでは 8...Qd8?! としないようにしたい。8.Ne4 Qd8?! 9.Ng3 Bg6 10.h4 以降、白は好形を築ける。

8.Ne4 に対しては 8...Qc7 が有効。9.Nxf6+ gxf6 10.Qe2!? Nd7 11.0-0-0 0-0-0

8.Qe2
Bc4 を守りつつ、Qe2 が d6 ポーンをピンするため、d5 pawn break などの狙いがある。0-0-0 可能となる。
8.Qe2 Bb4! 9.a3 Nbd7 10.0-0-0 Bxc3 11.Bxc3 Qc7 ( 9.0-0-0 では 9...Nd5! の変化がある )



8...Qd8


避難場所はここしかない。

8...Qa4?? 9.Bb3 で黒はクイーンを失うことになる。



9.Nxf6+


前述( ※ )の狙い通り交換する。


黒は 9...Qxf6, 9...gxf6 の選択を迫られる。...gxf6 でポーンストラクチャーが崩れるのが嫌ならば初めは 9...Qxf6 を選ぶといいだろう。中級者になってきたら評判のいい 9...gxf6 も試していこう。

白としては 9...Qxf6 と 9...gxf6 両方への対応が必要。

9...Qxf6
10.Qe2! で e6 ポーンをピンして d4-d5 の pawn break を狙う。ただし d4-d5 が
早過ぎると良くない。

9...gxf6
ポーンストラクチャーが崩れることはエンドゲームに影響を与えるだけでなく、...0-0 しづらくなる。しかし、half-open g ファイルを活用できるのと、...Qxf6 のようにクイーンの位置が良くないのを避けられる。大抵 ...0-0-0 することで問題ない。

9...gxf6 の変化で白は、Nh4 で Bf5 を攻撃し、その後 f2-f4-f5 の狙いを見せ黒の ...f5 を誘う。...Bg6 とした後 ...f5 とすると、Bg6 が活用しづらくなる。黒は ...Bg6 の後、...Bg7 とした場合、...f5 で Bg7 の利きを通そうとするとやはり ...Bg6 を閉じ込めることになる。また、...Bg7 は Rg8 の利きを妨げることにもなる。

9...gxf6 10.Bb3 Nd7 11.Qe2 Qc7 12.Nh4 Bg6 13.0-0-0 0-0-0 など



9...Qxf6


クイーンで取ることによりポーンストラクチャーが崩れることを避けられる一方、クイーンを多く動かしているため、展開で遅れることになり、クイーンの位置も良くない。



10.Qe2!


黒の展開が遅れているため、Qe2 で e6 ポーンをピンし、d4-d5 pawn break で
オープンな局面にして展開の利を生かそうとする。

c2 ポーンを Bf5 に取られる可能性はあるが、10...Bxc2? とすると 11.0-0  11.Bc3  11.Rc1 そして 11.d5 でさえも e6 ポーンをピンしている白にとって都合が良くなるため、10...Bxc2? とされることは心配ない。ただしその後の対応が大事。

10.Bg5?!
10...Qg6 で c2 ポーンを狙われ先手の利を失う。



10...Nd7


白が d4-d5 とした時の影響を制限するか、d4-d5 を妨げようとする( 11.d5?! cxd5 12.Bxd5 Be7 13.Bc3 Bb4!! )。

...0-0-0 可能となる。 どちらへキャスリングするかはその後、選択可能

10...Bg4
白が Ne5 や Bg5 とするのを阻止する。10...Nd7 の変化に transpose しやすい。10...Nd7 と主な違いは、10...Bg4 では白が 早期に d4-d5 とするチャンスがあり
それが黒に選択を与える。
10...Bg4 11.d5!? Bxf3 12.gxf3 cxd5 13.Bxd5 Qxb2!?
10...Bg4 11.0-0-0?! Be7! 12.h4 Qf5 13.Qe3 Nd7

10...Bd6
...0-0 の準備。
10...Bd6 11.Bg5!?( 11.0-0-0 も良い ) 11...Qg6 12.d5! cxd5 13.Bxd5 Nc6 14.Bxc6+ bxc6 15.Qd2!


10...Nd7 11.0-0-0 Bg4 12.d5 Bxf3 13.gxf3 cxd5 14.Bxd5 0-0-0 または 14...Ba3 などと続く

参考ゲームのリンク ( chessgames.com )


補足1 白2手目変化

2.Nc3


白として悪くない手。2.exd5 となることが多いため、黒が 2.Nc3 に対して適切に対処できなければ有利を得ることも可能。

2...dxe4 または 2...d4 とするのが良い。

2...e6 なら French Defence, 2...c6 なら Caro-Kann Defence, 2...Nf6 なら Alekhine Defence の変化になるが、これらの場合オープニングで白はまだ有利を得やすい。

2...dxe4 3.Nxe4
3...Nd7 4.Bc4!? e6 5.Qe2 Ngf6
3...Bf5 4.Ng3 Bg6 5.h4 h6 6.Nf3 Nd7
3...Nc6!? 4.Nf3 Bf5 5.Ng3 Bg6
3...Qd5!? 4.Ng3!? ( 4.Nc3 なら 2.exd5 Qxd5 の変化に ) 4...Nc6 5.Nf3 e5!?

2...d4 3.Nce2 e5
4.Nf3 f6 5.Ng3 Be6 6.Bb5+ c6 7.Ba4 Na6!?
4.Ng3 Be6 5.c3!? c5 6.Bb5+ Nd7



2.d4


Blackmar–Diemer Gambit ( 1.d4 d5 2.e4 dxe4 3.Nc3 )を使う人が指してくる
可能性がある。

2...dxe4 3.Nc3
この後 黒は下記のように様々な変化がある。
3...Nf6  3...e5  3...Bf5  3...c6  3...e6



2.e5?!


白として避けるべき手。黒にとって有利な状況が加わる French Defence や Caro-Kann Defence になってしまう。

...e6 としてないため Bc8 を展開させてから ...e6 とできる。
...c6 としてないため ...c5 とすることも可能。
ゲーム展開によって ...Bf5 だけでなく ...Bg4 の選択肢もある。

2...c5! 3.Nf3 Nc6 4.Bb5 Bg4!? 5.h3 Bh5 6.g4!? Bg6 7.e6
2...c5! 3.c3 Nc6 4.d4 Bf5 5.Nf3 e6



2.d3


黒に様々な選択肢を与えるため面白くもあるが、初心者 ~ 初級者は避けるべき。

2...dxe4 3.dxe4 Qxd1+ 4.Kxd1 e5
白はキャスリングできなくなってもクイーンが無くなったため十分戦え、実力勝負となるだろう。白は先手の利を失っていることを忘れてはならない。c2 が白キングの安全場所となりやすい。

2...e5!? 3.exd5 Qxd5 4.Nc3 Bb4! 5.a3 Bxc3+ または 5.Bd2 Bxc3
黒は白の Nc3 でクイーンを後退させずに済む。

2...Nf6 も良い。
3.e5 Nfd7 4.f4!? c5 5.Be2 Nc6 6.Nf3 e6

2...Nc6!? や 2...g6!? も可能。

2...c6 と 2...e6 も可能だが 2.d3 をとがめることにならない。

黒としては 2.d3 に対して1つは対応を考えておきたい。



2.Nf3?!


短時間のゲームならば黒は油断できないだろう。

2...dxe4 3.Ng5
3...Bf5! 4.g4!? Bg6 5.Bg2 Nf6 6.Nc3 h5!
3...e5!? 4.Nxe4 f5! その後 ...Be6


補足2 白4手目変化

4.Bc4


d2-d3 とする変化があり、d3 ポーンで Bf1 の展開が妨げられる前に Bc4 へ展開しておく。d2-d3 とする変化は GM Nigel Short に因み Short System と呼ばれる。

d3 にポーンを進めることで黒側の Bf5 の活用性を鈍らせ、d ファイル上で黒のカウンターアタックを制限させる。また Nf3 を d4 に展開させることも可能。

d3 と d4 ポーンの主な違いは d3 のポーンストラクチャーの方が solid であること。
4.Bc4 Nf6 5.d3 c6?! 6.Bd2! Qc7 7.Qe2 Bf5 8.h3 e6 9.g4 Bg6

4.Bc4 Nf6 5.d3 Bg4! 6.f3! Bd7 7.Bd2 Qb6 8.Qe2 Nc6 9.0-0-0 Nd4

4.Bc4 c6 5.d3!? Bf5!? 6.Bd2 e6 7.Qe2 Nd7! 8.0-0-0!? Qe5!



4.Nf3


d ポーンを進めるのは適切なタイミングで行う。4.Nf3 Nf6 5.Be2 では、黒が Bc8 を
展開した後 ...b4 とする狙いがある。

4.Nf3 Nf6 5.Be2 c6! 6.0-0 Bg4!? 7.b4 Qc7

4.Nf3 Nf6 5.Be2 Bg4?! 6.h3 Bh5 7.b4! Qb6 8.0-0 c6 9.Rb1 e6 10.b5!
...c6 としてないうちに ...Bg4 とすると、Qa5 を c7 や d8 に後退させることができず、白に b4 とされると黒は困る。...Qxb4 とすると Rb1 から b7 ポーンを失い、白が好形。



4.g3


positional play となる solid な手。Bf1 を g2 に運び活用する。この変化では黒も ...g6 から ...Bg7 とする場合がある。

half-open d ファイルと d5 のマスが黒の利点となり、Bg2 の活用と e5 のマスが白の利点となる。

4.g3 Nf6 5.Bg2 g6! 6.Nf3 Bg7 7.0-0 0-0 8.d4 Nc6!?

4.g3 Nf6 5.Bg2 c6 6.Nf3 Bg4! 7.h3 Bh5 8.0-0 e6



4.b4?!


Mises Gambit と呼ばれ、白は b ポーンを犠牲にして Rb1 から b ファイルを活用する狙いがあるが疑問視されている。

4...Qxb4 5.Rb1 Qd6 6.d4 Nf6 7.Nf3 a6! 8.g3! b6 9.Bg2 Bb7 10.0-0 e6


参考文献

starting out: the Scandinavian - Jovanka Houska
Play the Scandinavian - Christian Bauer
Scandinavian Defence The Dynamic 3...Qd6 - Michael Melts
beating unusual chess defences: 1 e4 - Andrew Greet
Scandinavian Defense - Wikipedia
スカンディナヴィア - Wikipedia
Ludvig Collijn - Wikipedia

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