Nimzowitsch Defence


ニムゾヴィッチ ディフェンス。古くは16世紀から使われていた。
Riga ( Latvia の首都 )に生まれ、後にデンマークに移住したマスター
Aron Nimzowitsch ( 1886 ~ 1935年 ) が分析したことに因んでいる。

黒初手でナイトを展開するのは 1.e4 Nf6 の Alekhine's Defence に似ているが
Nc6 は何も攻撃してないため白に 2.d4 とすることを許す。Alekhine's Defence より
さらに使ってくるプレイヤーは少ないが、中級者以上になると得意とするプレイヤーも現れ、白のプレイヤーは油断できないだろう。


1.e4 Nc6


クイーンサイドのナイトを先に展開させているので、黒は 0-0-0 する可能性がある。

白は当然のごとく 2.d4 とできるが、それは黒も承知の上で通常  2...d5 や 2...e5 で反撃する。1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 のゲームに慣れているとこのような展開は始め戸惑うだろう。

1...Nc6 に1つの対策しか持ってない白のプレイヤーが多いため、そういった点でも 1...Nc6 を使うプレイヤーはよく心得ており、自分有利にゲームを進めていこうとする。しかしプレイヤーの実力が同じぐらいならば、黒はそう簡単には有利を得られないだろう。



2.Nf3


2.d4 のように d ポーンを Nc6 に攻撃されることなく、センターに影響を与える自然なピース展開。

黒としては 2.d4 より 2.Nf3 とされる方が嫌だろう。2...e5 として Open Games にすれば問題ないが、それなら始めから 1...e5 とすればよく、1...Nc6 とするのは変化を
増やすだけ。

2...d6、2...d5、2...Nf6、2...e6、2...g6 とするのは黒が劣った形で他のオープニングに transpose しやすい。2...f5 は sharp だがこの変化を得意とするプレイヤーもいる。

白2手目変化については 補足1 で扱う( 後述 )。



2...Nf6


e4 ポーンを攻撃することで対応を迫る。2...d6 とすれば e4 → e5 を妨げられるが
逆に 2...Nf6 は 3.e5 を誘う手で Alekhine's Defence に似ている。
アンバランス( 不均衡 )な局面にさせる。

2...d6 3.d4 Nf6 4.Nc3 Bg4 5.Be3 e6 ( 4...g6 5.d5 Nb8 )
2...d5 3.exd5 Qxd5 4.Nc3 Qd6 5.d4 Nf6 6.Nb5 Qd8 7.d5 Nb4
2...e6 3.d4 d5 4.Nc3、あるいは 4.Nbd2、 4.e5
2...g6 3.d4 Bg7 4.d5 Ne5 5.Nxe5 Bxe5 6.c4 d6
2...f5?! 3.exf5 d5 4.Bb5 Bxf5 5.Ne5 Qd6 6.d4 Nf6



3.e5


誘いに乗るようだが e5 で Nf6 を追いやる。

3.Nc3
無難な手、3...e5 となれば Four Knighits Game に transpose するが
1...Nc6 とするプレイヤーは 3...d5 としてくるだろう。

3.Nc3 d5 4.exd5 Nxd5 5.Bc4 Nb6 6.Bb3 Bf5 7.0-0 e6



3...Ng4


1.e4 Nf6 2.e5 では通常 2...Nd5 とするので、上図のような局面にはならない。
e5 ポーンが2つのナイトに攻撃されているので、今度は白が対応を迫られる。

後で h3 とすると Ng4 は h6 へ後退となり白好形だが、黒の方がこの変化をよく
知っているため白は油断できない。


4.d4



自然な対応。e5 ポーンを守りつつ Bc1 の利きも開かれる。



4...d6


Bc8 の利きを開くとともに e5 ポーンを攻撃することでテンション( 互いに駒を取れる状態 )が作られる。

テンションを保つのが良いか、解放するのが良いかは状況次第。テンションが重要な役割を果たすことは多い。テンションが解放されるまでは、テンションの影響を忘れないようにしよう。



5.h3


自然な手。...dxe5 とされると白はポーン1つ損することになるので、e5 ポーンを攻撃している Ng4 を追いやる。

5.exd6 とすると白は 5th ランクのポーンがなくなり、Alekhine's Defence の Exchange Variation に似ている ( 1.e4 Nf6 2.e5 Nd5 3.d4 d6 4.c4 Nb6 5.exd6 )。黒は 5...exd6、5...cxd6、5...Qxd6 いずれも可能。



5...Nh6


ここに後退するしかない。端列のナイトは活用性が低くなり、Bxh6 とされることも考えられる。



6.Nc3


先に Bf1 の展開を考えたくなるが、6.Nc3 で 6...dxe5 を妨げる。
6.Nc3 dxe5? 7.d5 で白が良い。Nc3 はセンターに影響を与え柔軟性もある。

6.Bb5 a6 7.Bxg6+ bxc6 8.0-0 e6
6.exd6 Qxd6 7.Nc3 a6! 8.d5 Ne5 9.Bf4 Nd3+!
6.e6 fxe6 ( 6...Be6?? 7.d5 ) 7.Bxh6 gxh6 8.Nh4 Qd7!




6...a6



b5 を支配しておくことで 7.exd6 Qxd6 8.Nb5 を防ぐ。

6...dxe5?! 7.d5
6...g6 7.Bf4 dxe5 8.dxe5 Nf5 9.Nb5 a6? 10.Qxd8+



7.Bg5!


定跡を知らなければこの手は気づきにくい。e7 ポーンをピンすることで黒に問題を
もたらす。対応を迫ったり、問題をもたらすことは initiative ( 主導権 ) につながる。

定跡は有効無効な手を知るよりも、アイデア ( 発想 ) を学ぶことが大事。

7.d5? は 7...Nxe5 で黒は問題なし。
7.exd6 Qxd6 8.d5 Ne5 9.Bf4 Nd3+ 10.Bxd3 Qxf4



7...Bf5


...Qd7 とする前に Bc8 を展開させておく。

7...g6 8.Qd2 Nf5 9.g4 Ng7 10.exd6 Qxd6 11.Bf4 Qd8
7...dxe5 8.d5 Nb8 9.Nxe5 g6 10.Qd2 Nf5 11.g4 Nd6



8.Nh4!


e5 ポーンに対して Nf3 の守りが外れるが、Bg5 が Nh6 を攻撃しているので
9.Bxh6 gxh6 10.Nxf5 の狙いがある。しかし本当の狙いは 8...Qd7 に対し 9.g4! と
すること。

8.g4 Bg6 9.Bg2 Qd7 10.0-0 d5!



8...Qd7


Bf5 をタダ取りされないように守る。

8...Bg6 9.e6!
9...fxe6 10.Nxg6 hxg6 11.Bd3 Qd7 12.Bxg6+
9...d5 10.Nxg6

8...dxe5?? 9.Bxh6 gxh6 10.Nxf5

8...Be7?? 9.e6!
9...Bxe6 10.d5
9...fxe6?? 10.Bxh6 gxh6?? 11.Qh5#



9.g4!


白は initiative を取りながら積極的に攻める。白キングの安全性に注意が必要だが
攻めのチャンスを逃さない。



9...Bg6


すでに白が良い状況。
9...Be6?? では 10.d5 でフォークがかかる。

9...Bxg4?? 10.hxg4
11...Nxg4?? 12.Bh3
11...Qxg4 12.Bxh6 Qxd1+ 12.Rxd1 gxh6



10.d5!


Nc6 を後退させる。10...Nxe5?? には 11.f4 で黒はマイナーピースを失うことになる。



10...Nd8


10...Nb8 より活用できる。

黒はスペースで劣っているので上手くピース交換したり、ポーンを進めて反撃したいが、白に主導権を握られている。

白はスペースで勝っているため不要な駒交換を避け、ピースを活用している。
白は有利だがまだ油断できない。

11.f4 e6 12.dxe6 fxe6 13.Nxg6 hxg6 14.Bd3 Nfd7 などと続く


補足1 白2手目変化

2.d4


センターに2つのポーンを並べるのは自然で、たまにしか遭遇しない 1...Nc6 に対策を考えてなければこの手を指しやすい。

2.d4 とするのは悪くはないが 2...d5 や 2...e5 ですぐさま反撃されるので、白としてはある程度対応を考えておいた方がいいだろう。白が定跡を知らなければ、手慣れた黒が有利を得る可能性は高い。

2...e5 の場合 3.Nf3 とすれば Scotch Game となるので Scotch Game に慣れているプレイヤーなら問題ないが、そうでなければ不慣れな変化に誘いこまれる。
3.d5 や 3.dxe5、3.c3 としてもその変化をある程度知っておかないと、黒の方がその変化に詳しい可能性が高い。

久しぶりに 1...Nc6 に遭遇したとき、定跡をどれだけ覚えているかということも問われる。2.d4 と指して 2...d5 と 2...e5 の両方に上手く対応できるかも 2.d4 を使うかどうかの判断材料となる。

2...e5
3.d5 Nce7 4.Nf3 Ng6 ( 4.c4?! Ng6 )
3.dxe5 Nxe5 4.Nf3 Nxf3+ 5.Qxf3 Nf6 or 4.f4 Nc6

2...d5
3.exd5 Qxd5 4.Nf3 Bg4 5.Be2 0-0-0
3.e5 f6 4.f4 Nh6 5.c3 Bg4
3.Nc3 e6 4.Nf3 Nf6 5.e5 Ne4



2.Nc3


1.e4 Nc6 2.d4 d5 3.Nc3 の変化と関連性が高い。play 1...Nc6! の本で Wisnewski は 2...e6 を薦めている。

2...e6 3.d4 d5 となると French Defence のマイナー変化となる。4.exd5 exd5 となれば Exchange Variation のようになるが、この局面は黒に都合がいいそうだ。

2...e6 3.d4 d5
4.exd5 exd5 5.Nf3 Bg4 6.Be2 Bb4 ※
4.e5 Nge7 5.f4 Nf5 6.Nf3 b6 7.Bb5 Bd7
4.Nf3 Nf6 5.e5 Ne4 6.Bd3 f5!? 7.exf6 Nxf6

2...e6
3.g3 d5 4.Bg2 d4 5.Nb1 e5
3.Nf3 d5 4.exd5 exd5 5.d4 Bg4 6.Be2 Bb4 ※ と同じ局面



2.Bb5


2...d5!
3.Bxc6+?! bxc6 4.e5 c5 ( 4.exd5?! cxd5 )
3.exd5 Qxd5 4.Bxc6+ Qxc6 ( 4.Nc3? Qxg2 5.Qf3 Bh3! )
3.Nc3 dxe4 4.Qe2 Bd7 5.Nxe4 Nd4 6.Bxd7+ Qxd7



2.d3


白 e4 、d3 のポーンストラクチャーから g3、Bg2 と続ければ  King's Indian Attack
のようになるが 2...e5 とすることができる黒が好形。

1.e4 e5 のとき、2.d3 とするのが良くないようなもの。d3 ポーンが Bf1 の展開を
妨げ、Bg2 としようとしても ...Nf6 から ...d5 など黒に反撃の機会を与える。

2...e5 3.Nf3 Nf6

4.Be2 d5
5.Nbd2 Bc5 6.0-0 0-0 7.c3 a5

5.exd5 Qxd5
6.Nc3 Bb4 7.Bd2 Bxc3 8.Bxc3 0-0
6.0-0 Bc5 7.Nc3 Qd6 8.Bg5 Bg4

4.g3 d5
5.Nbd2 Bc5 6.Bg2 0-0
5.exd5 Qxd5! 6.Bg2 Bg4

2...e5 3.f4!?
4.Nc3 Bb4 5.fxe5 Nxe5 6.Nf3 Qe7
4.Nf3 exf4 5.Bxf4 d5 6.e5 Nh5

2...Nf6 3.Nf3 d5 4.e5 Nd7 5.d4 Nb6 のような指し方も可能。



2.c4?!


白にとって d5 が強いマスとなるが 2...e5 とされると白は黒マスが弱くなる。

2...e5 3.Nc3 Bc5 ( 3.Nf3 Bc5 )

4.d3 d6 5.Be3 Bb6 6.Nf3 Nge7
4.Nf3 d6 5.d3 Nge7 → ...0-0, ...f5 と続ける狙い
4.g3 d6 5.Bg2 Nge7 6.Nge2 0-0



2.f4?!


1.e4 e5 2.f4 の King's Gambit を使うプレイヤーが指してきそうな手。

白としてそれほど悪くはないが、1...Nc6 を使うプレイヤーは 2...e5 とせず
2...d5 として白の不慣れな変化に誘い込むだろう。

2...d5

3.exd5 Qxd5 4.Nc3 Qd6 5.Nf3 Bg4 6.Be2 0-0-0

3.e5 d4!
4.Nf3 Qd5! 5.Be2 Bf5 6.0-0 e6
4.Nf3 Qd5! 5.Na3 Bg4 6.Be2 e6
4.Bc4 Nh6 5.Nf3 Bg4 6.0-0 e6 ( 6.h3 Bxf3 7.Qxf3 e6 )
4.d3 Nh6 5.Nd2 Bg4 6.Ngf3 Nf5

3.Nc3 d4
4.Nb1 e5 5.Nf3 exf4 6.d3 g5
4.Nce2 e5 5.Nf3 f5!? 6.d3 Bd6


参考文献

play 1...Nc6! - Christoph Wisnewski
beating unusual defences: 1 e4 - Andrew Greet
the dark knight system - James schuyler
Nimzowitsch Defence - Wikipedia

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