Albin Countergambit


アルビン カウンターギャンビット。ルーマニアのチェスプレイヤー Adolf Albin ( 1848 ~ 1920年 ) にちなんだオープニング。1.d4 d5 2.c4 Queen's Gambit に対して 2...e5 の Gambit で応じるためカウンターギャンビットの名がついている。オープンな局面になりやすいので、黒番で閉じた局面が苦手な場合はこの定跡を使ってみるのもいいかも知れない。

1.d4 d5 に対し 2.c4 とする白プレイヤーは Albin Countergambit にある程度対策を持っていたい。一方、黒プレイヤーは白が2手目に c4 としてこなかった時、あるいは 1.c4 や 1.Nf3 などとしてきた時は Albin Countergambit を使えないことが難点。

主な変化
3.dxe5 d4
4.Nf3 Nc6 5.g3 または 5.Nbd2 5.a3
4.e4 Nc6 5.f4 f6
4.a3 Nc6 5.Nf3 または 5.e3


1.d4 d5 2.c4 e5


ポーン1つ犠牲にしても白に 3.dxe5 を迫り、3...d4 と続け、ピースの可動性をいかして反撃する狙い。黒は両ビショップの利きが開かれオープンな局面となっている。
ポーン1つ得したとしても白は油断してはならない。


3.dxe5 


黒の誘いに乗るようだが素直に e5 ポーンを取ることで問題ない、むしろ取らなければ利を逃す。ただし定跡として機械的に指す前に 3.dxe5 としたら黒はどう応じてくるか ( 例えば 3...Bb4+ とされて大丈夫か? )を考えるのは大事だと思う。

3.cxd5 は 3.dxe5 より劣るが悪くない。黒プレイヤーは 3.cxd5 の変化にある程度
対応を考えておいた方がいいかも知れない。3.cxd5 Qxd5 から 4.Nf3 4.dxe5 4.e3 4.Nc3 などいくつか変化が考えられる。


3...d4


2...e5 の時点で狙っていた手。Nc3 を防ぎ Bb4+ の活用を考える。白が 4.e3? とすれば 4...Bb4+ 以降 sharp な展開となるため、白に問題をもたらす。

3...dxc4?! は 4.Qxd8+ Kxd8 でクイーン交換以降、エンドゲームで黒は不利となりやすい。


4.Nf3


d5 ポーンを守り、d4 ポーンを攻撃する堅実な手。白に d4 ポーンの守りを強いる。

4.e3? 最初は指してしまうかも知れないが、白として避けるべき手。4...Bb4+ 以降  白は対応が厳しくなる。詳細は後述の補足にて。

4.e4 Spassky Variation
4.Nf3 より劣るようだが使ってみたい手。4.e4 dxe3?? としてしまうと 5.Qxd8+ で
白優勢。4...Bb4+?! は 5.Bd2 に対して 5...dxe3 とできない!

4.e4 には 4...Nc6 5.f4 f6! または 5...g5!?
4.e4 としてくるプレイヤーは少ないかも知れないが、黒プレイヤーは対応を考えておこう。

4.a3
...Bb4+ を防ぎ、b2 → b4 としてクイーンサイド攻め、Bc1 → b2 など考えられる悪くない手。
4.a3 Nc6 5.Nf3 Nge7!? 6.b4 Ng6 7.Bb2 a5 8.b5 Ncxe5 9.Nxe5 Nxe5 10.Bxd4 Nxc4 など


4...Nc6


ピース展開し d4 ポーンを守る自然な手。

4...c5
d4 ポーンを守り悪くないようだが Bb4+ とできなくなること、5.e3 とされると 5...Nc6 6.exd4 cxd4 で孤立 d4 ポーンができ白好形の模様。
4...c5 5.e3 に 5...dxe3?? は 6.Qxd8+ 以降 白優勢なので黒プレイヤーは気をつけよう。


5.g3


気づきにくい手 ( メインライン )。 5.e3 とすれば 5...Bb4+ とされるため、Bf1 を g2 で活用する。

5.Nbd2
Nd2 → Nb3 として黒 d4 ポーンを攻める狙いがある。

5.Nbd2 Be6 6.a3 a5 7.Nb3 Bxc4
5.Nbd2 Bf5 6.Nb3 Qe7 7.Nbxd4 0-0-0

5.a3
...Bb4+ を防ぎ b2 → b4 とすることも考えられる。
5.a3 Bg4 6.Bf4 Nge7 7.Nbd2 Ng6


5...Nge7


Ne7 → Ng6 として白 e5 ポーンを攻める狙い。

黒5手目に Bc8 を展開する変化は ...Qd7 と続けて ...0-0-0 する模様。
5...Be6 6.Nbd2 Qd7 7.Bg2 0-0-0 8.0-0 h5
5...Bg4 6.Bg2 Qd7 7.0-0 0-0-0 8.Qb3 Nge7
5...Bf5 6.Bg2 Qd7 7.0-0 0-0-0 8.a3 f6


6.Bg2


白ビショップを活用できる位置に移す。6...Ng6 とされると白 e5 ポーンを失いそうだが 7.Bf4!? とできる。

Ne7 により黒は ...Bb4+ とできないので 6.e3?! も考えられるが 5.g3 とした意味がなくなるのと 6.e3?! Bg4 7.exd4 Nxd4 8.Bg2 Nxf3+ 9.Bxf3 Qxd1+ 以降 互角になる。

6.Nbd2
6...Ng6 とされると白 e5 ポーンを失うが 7.Bg2 Ngxe5 8.0-0 でキャスリングを済まし若干白が良いようだ。


6...Ng6


白 e5 ポーンを2重攻撃、Bf8 の利きも開かれる。
e4 、d5 にポーンがないため、Bg2 の影響を常に忘れないようにしよう。

白7手目はいろいろあるため、短時間ゲームだと黒は対応に困りそう。


7.0-0


e5 ポーンを失うことになるが 7.Bf4!? より良い模様。

7.Bf4!?
7...Nxf4 8.gxf4 となれば白はビショップペアでなくなり、ポーン1つ多くともダブルポーンと孤立ポーンができたこと、キングの安全性など問題になりそうだが、白は悪くないようで、7...Be7!? とする方が黒は良いようだ。

他にも 7.Bg5 7.Qa4 7.Qb3 いずれも悪くなく黒にとって厄介だろう。


7...Ngxe5


ギャンビットしたポーンを取り戻せるが、ポーンを取れる時はそれがトラップだったり、思わぬ反撃に合うこともあるので、取って大丈夫かしっかり確認してから取ろう。

7...Ncxe5?? は 8.Nxd4 で白有利となるので気をつけよう。


8.Nxe5


自らナイト交換を行い Bg2 の利きを開き、先手の利を生かす。8...Nxe5 の後、Bg2 が b7 ポーンを攻撃していることは黒にとって厄介。

白黒ともに両ビショップの利きが開かれてオープンな局面。このような局面から有利を得るのは容易ではないが、ミスするのは容易いので気をつけたい。

8.Nbd2
c4 ポーンを守りつつ、黒に ...Nxf3 とさせる選択肢を与える。黒は 8...Nxf3+ とするより 8...Be7 とする方がいい模様。
8.Nbd2 Be7 9.b3 0-0 10.Bb2 Nxf3+ 11.Nxf3 Bf6


8...Nxe5


取るしかない。Ne5 が c4 ポーンを攻撃しているので白は対応を問われる。
白 Nb1 に比べ、センターにある 黒 Ne5 の方が良い働きをしている。しかし Ne5 は守られておらず、攻撃を受けやすいので注意が必要。


9.b3


堅実な手。c4 ポーンを守るとともに Bc1 → b2 として d4 ポーンを攻められる。
Qd1 を a4 や b3 に展開できなくなる面もある。

9.Na3!?
Na3 を c2 または b5 に運び 黒 d4 ポーンを攻める狙い。9...Bxa3?! に 10.bxa3?  としてはダブルポーンと孤立ポーンができて白は良くないが 10.Qa4+ から Qxa3 で、オープンな局面でビショップペアを保っている白が有利。
9.Na3!? Be7 10.Nb5 0-0 11.Nxd4 Nxc4 12.b3 Bf6

9.Qb3!? Bc5 10.Bf4 Qe7 11.Bxe5 Qxe5
9.Nd2 Be7 10.Nf3 Nxf3+ 11.Bxf3 0-0


9...Bc5


白 Bb2 に備え d4 ポーンを守り、0-0 可能となる。さらに 10.e3? とされた時
10...0-0 や 10...Bg4 で黒有利となる。
白は 10.b4 という手も可能なので黒は気をつけたい ( 10.b4 Bxb4?? 11.Qa4+ )

9...c5?!
d4 ポーンを守り悪くないように思えるが 10.e3 で白が良い。
9...c5?! 10.e3 Bg4 11.f3 Be6


10.Nd2


Nd2 → e4 として d4 ポーンを守っている 黒 Bc5 を攻める狙い。

10.Bb2 0-0 11.Nd2 a5


10...0-0


11.Ne4 とされると Bc5 を再度動かすことになるがキャスリングを済まし
白が d4 ポーンを攻めてくるのに備える。


11.Ne4


センターの好位置に運び 黒 Bc5 を攻撃し、Bb2 につなげる。

11.Bb2 a5 12.Ne4 Ba7 13.Qd2 Qe7


11...Be7


適切な位置に後退。

11...Bb6?? 12.Ba6 Re8?? 13.c5 Ba5 14.b4

12.Bb2 f5 13.Nd2 ( 13.Bxd4?? Nc6 )
13...c6 14.Nf3 Nxf3+ 15.Bxf3 Bf6 などと続く ( 下図 )



互いにビショップペアとクイーンが残っており、有利を得るのが難しそうな局面。
白はキングサイド、黒はクイーンサイド で ポーンマジョリティ。
d4 ポーンをめぐる攻防。ビショップをどのように活用するか。クイーンとルークの
活用。ピース交換による影響。エンドゲーム ストラテジー。など


補足

1.d4 d5 2.c4 e5 3.dxe5 d4 4.e3? Bb4+


白は 4.e3? とすべきでないが、指すとどうなるか知っておくのもためになる。

4.e3? Bb4+
5.Bd2 dxe3 6.Bxb4?? exf2+ 7.Ke2 fxg1=N+! 8.Ke1 Qh4+ ( 8.Rxg1?? Bg4+ )
5.Bd2 dxe3 6.fxe3 Qh4+ 7.g3 Qe4 8.Nf3 または 8.Qf3 で互角

5.Nd2 dxe3 6.fxe3 Qh4+ 7.g3 Qe4 8.Qf3 Qxe5
5.Ke2 Be6 6.b3? c5


参考文献

unusual queen's gambit declined - Chris Ward
Albin Countergambit - Wikipedia
The Albin Counter Gambit: Morozevich-Mengarini Variation By Michael Goeller

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